前回の続き・・・
厚生労働省では、2025年(平成37年)を目標とし、地方基礎自治体に対して3年毎の介護保険事業計画の見直しをかけながら、地域の特性に応じた地域包括ケアシステム(地域の包括的な支援・サービス提供体制)を構築することを推進するとしている。
一言で言えば、高齢者が最期まで慣れ親しんだ地域で自立的に充実した生活ができるように包括的な支援・サービスを提供する、という意味だが、いまひとつ国民には、入院から在宅介護へのシフトチェンジだろうくらいにしか思われていない。
事実、関連する様々な識者のレポートを見ても、そこに出てくる単語は「介護」「ケアワーカー」であり、その目線で述べたものしかない。
しかし実際に、高齢者が自立して生活できるようにするためには、(車を運転しなくても買い物に行けるように)買い物弱者の問題を解決すべく都市計画の視点が必要だったり、予防医学の観点から「食」の視点が必要だったり、あるいはコミュニティ再生の観点から「コミュニティデザイナー」のような人材育成の視点が必要だったりする。
厚生労働省でも、課題解決のために「地域資源の発掘」を大きく掲げており、その中で「地域リーダーの発掘」という言葉は見当たるのだが、都市計画や「食」によるソリューションについては(国土交通省や農林水産省への気遣いか)一切記述が見られない。
都市計画のコンテンツが見られるのは東京大学の高齢者総合研究センターのレポートくらいで、「食」については福祉事業所等で回覧されるユーザー側の雑誌に見られるくらいだ。
しかし、「医食同源」という古来の発想に立つならば、厚労省と農水省の縦割りもない話であって、基礎自治体がいかにこの壁を崩せるか、が鍵となっているのだと私は思う。
また、そのことを実践していくための「地域リーダー」というのも、これまでの「ソーシャルワーカー」のみでは務まらないのであって、垣根を越えてあらゆる知識を豊富に備えた「コミュニティデザイナー」が必要なのである。
まさに小布施町には、地域包括ケアの「コア」となる新生病院があって、各コミュニティの「サテライト」となる診療所があって、インフラは敷かれているのである。
そして、耕作放棄地という「地域資源」と、コミュニティデザイナーとしての資質を備えた有能な「地域リーダー」が、眠っているのである。
今、農業の世代交代が行われている時期にあって、まさに農業のアントレプレナーたちが、「地域リーダー」としてコミュニティをデザインしていくに最適のタイミングなのである。しかし農業家は専門家であって万能なジェネラリストではない。
小布施町のまちづくりの第2世代は、ぜひ農業で小回りのきく起業家たちと、それを支援する多方面のNPOや識者であってほしい。そして、これらの異なる業種を結び付ける「結束節」(ジョイントノード)は、新生病院でなくては果たせないのだと、私は考えている。
これが全国でも初めての小布施型地域包括ケアシステムとなることを望んでやまない。
以上