2008年3月にヒュザー元社長(小嶋進)に有罪判決(懲役3年、執行猶予5年)が出たことを覚えているだろうか。あれからちょうど3年がたつが、福島原発事故に際して、いつもこのことが頭に思い浮かんでならない。
裁判長(毛利晴光)の言う罪状は、グランドステージ藤沢を購入者に引き渡す以前に耐震設計に問題があることを知っていたにもかかわらずこれを引き渡し、代金を受け取ったというのが詐欺罪に当たるという主旨だった。・・・「一生に一度の大きな買い物をする人の心情を考えずエンドユーザーを軽視した悪質で無責任極まりない犯行。被害者は代金をだまし取られ、人生設計を大きく狂わされた。」・・・
この裁判長の道理が通るならば、今回の原発事故での国(枝野官房長官)も同罪の被告に当たるのではないかと思うのである。
水素爆発を想定し原子炉建屋の上部を壊れやすくしていたのは、国であり、また「ただちに健康に影響を与えるものではない」としながら近隣住民に事前告知を行わずベントを行ったのも国である。
「ただちに健康に影響を与えない」ことが正当化されるのならば、「グランドステージ藤沢」の場合も「ただちに崩壊するものではない」ことが正当化されるべきではないのか。
そもそも、姉歯氏の鉄筋低減によって耐震基準より下回ったとしても、ただちに崩壊するものではないし、永久に崩壊しない可能性もある。またプロならば分かるが、たとえ震度5強の地震が来ても必ずしも崩壊するとは言えない。(クラックは入るだろうが。)
そのまま長年住み続けることは危険だという意味では、同種あるいは原発事故より軽い問題かもしれなかった。にもかかわらず、行政(国と自治体)はヒューザー案件のマンション住民を強制避難させて追い出した。その結果、「・・・人生設計を大きく狂わされた。」わけだ。
この構造は、福島原発の避難区域の住民と同じである。 避難区域に”放射能が及ぶことが分かっていて”、”ベントを事前告知なしで行った”。 (そもそもベント弁も原子炉建屋上部の構造を壊れやすく作ってあるのも「周辺住民に対して直ちに健康に影響を与えるものではない」という理由から認容されているものであるが。・・・その結果、飯館村の住民などは「・・・人生設計を大きく狂わされた」わけだ。)
実はもっと国の責任は重い。
3月12日、枝野官房長官、保安院、東電は、「放射性物質が大量に漏れるような事故ではなかった」と記者発表していた。(http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/index_0312.html)しかしながら、実際は、ベントを含め水素爆発までの最初の数時間で、1時間当たり1万テラベクレルの放出(合計では数十万テラベクレルの放出)があったこと(これが「大量に漏れる事故であった」からレベル7の発表)を4月12日になって発表し、しかも枝野官房長官は当初から知っていたとまで供述している。
このことがヒューザーの事件と比べてどれほど重く、またどちらのほうが「隠ぺい体質」であるか、冷静に判断してもらいたいものだ。